夜、ベッドに入る前にスマホで「終活」と検索してみる。ひとつ記事を読むと、また気になる言葉が出てきて、新しいタブが開く。気づけばタブが20も30も。でも、自分の暮らしに合った道筋は見つからないまま、画面を閉じて電気を消す。「明日でいいか」。そんな夜を、過ごしたことはありませんか。
終活の情報は、世の中に山のようにあります。けれど、その多くは「ご家族と一緒に」「お子さまに残す」という前提で書かれていて、おひとりさまの方には、どうもしっくりこない。検索すること自体が、だんだん少し疲れる行為になっていく。そんな声を、現場で何度も聞いてきました。
私自身、50代でバツイチ・おひとりさま、子どももいません。終活協議会の活動を通して、たくさんの「これからを考えたい人」と話してきた経験から、いまの私はひとつのことを強く思っています。
終活でいちばん大切なのは、「やることを埋めること」ではなく、「これからをどう生きたいか」を、自分の言葉で見つけていくこと。
このブログ「終活はじめの一歩」では、終活を 「やりたいことリスト」を育てる時間 として、一緒に考えていきます。
終活とは?「やることリスト」ではなく「やりたいことリスト」の時間
世間で語られる終活の多くは、「もしものとき、家族に迷惑をかけないように」を主語に進んでいきます。葬儀、相続、断捨離。それぞれが大切なテーマであることは間違いありません。
ただ、その「もしも」を考えるなかで、私が現場でいちばん大事にしているのは、本人の「もっとこう生きたい」という声です。
チェックリストを埋めることに集中しすぎると、「いまをどう生きるか」「これから何をしたいか」という、本来いちばんワクワクするはずのテーマが、置き去りになってしまう。
終活は、「死の準備」よりもむしろ、これからをどう生きたいかを、自分にもう一度たずねる時間だと私は考えています。
そして、その問いから始まる時間こそが、結果として葬儀や相続、断捨離といった準備にも、自分らしい色を与えてくれる。順番が、逆なんですね。
なぜいま「生」の視点が必要なのか
終活という言葉が世の中に出てから、すでに10年以上が経ちました。
終活が言葉として知られるようになった当初は、「家族のための準備」という側面が強く語られていました。2011年公開の映画『エンディングノート』をきっかけに、「自分の意思を残す」という側面も広く知られるようになります。ここまでは、大切な進化だったと思います。
ただ、いま私が現場で出会う方々の状況は、もう一歩先に進んでいます。おひとりさまの増加。家族の形の多様化。デジタル遺品。そして何より、平均寿命が延びている時代に(内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、令和5年の平均寿命は男性81.09年・女性87.14年)、「あと何年あるかわからない時間を、何に使うか」が、現実の課題として浮上してきました。
実際、内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、老後の備えとして「終活関係の準備」が必要だと考える人のうち、実際に何らかの準備を始めている人は60.2%。裏を返せば、必要性を感じつつも、まだ最初の一歩を踏み出せていない方が約3割いらっしゃるということです。「気になっているけれど、まだ動けていない」。そんな状態は、決してご自身だけのものではありません。
死後の手続きを整えるだけでは、もう足りない時代に入っているのではないか。
自分が、これから何をしたいのか。何を手放して、何を始めるのか。ここに踏み込んでこそ、本来の終活だと私は思います。
「やりたいことリスト」を書き出す、4つの問いかけ
私が終活の対話のなかでよく使う問いかけが、4つあります。チェックリストを埋める前に、まずはこの問いをご自身に向けてみてください。
問いかけ① もし人生があと1年だったら、何をしたいですか?
「あと何年あるかわからない時間」と言われても、なかなかピンと来ないものです。
そんなときは、思いきって「あと1年」と区切ってみる。期間を限定すると、不思議と優先順位がはっきりしてきます。
私自身、この問いに答えたとき、まっさきに浮かんだのは、コロナの時期にずっと止まっていた海外への旅でした。貯まったマイルやポイントを片手に、マイラーとして世界を見て回りたい。50代に入ってからの、いちばん大きな「やりたい」のひとつです。
問いかけ② 今までやってきて、本当によかったことは何ですか?
過去の自分が選んでよかったこと。続けてよかったこと。
そこには、これからも続けたい、もしくは少し形を変えて続けたい、ご自身の核が眠っています。
私の場合は、Webマーケティングの経験で身についた「言葉にする力」が、いまの終活の仕事で活きています。誰かの人生の物語を、その人の言葉で書きとめる作業。畑違いに見えて、根っこのところは、ずっと変わっていなかったんですね。経験は形を変えて、これからにつながっていきます。
問いかけ③ ずっと気になっていたけど、まだ手をつけていないことは?
「いつかやろう」と思いつつ、後回しになっていること。
それはきっと、心のどこかで「やりたい」と思っている証拠です。私自身、今年の夏から新しくサーフィンを始める予定です。50代から海に出るのは、正直、緊張もあります。それでも、その緊張ごと楽しめるくらいには、自分の予想の範疇を超えるものに挑むことの面白さを、これまで何度も体験してきました。
「やりたい」を、いつ動かすか。終活は、その背中をやさしく押してくれる時間でもあります。
問いかけ④ 「お疲れさま」と自分に言える瞬間は、どんな時ですか?
頑張ってきた自分に、ご褒美をあげるとしたら、それはどんな時間でしょうか。
サウナで汗を流して、温泉宿で美味しいごはんと一杯のお酒を楽しむ夜。気になる本を一冊読み終えた静かな午後。神社の境内で御朱印をいただく、墨と朱の音。
こうした小さな「お疲れさま」の時間を、これからどう増やしていくか。これも立派な終活の一部だと、私は思っています。
4つの問いから、何が始まるか
この4つの問いに答えると、不思議と次のことが見えてきます。
ひとつめは、これからの時間の使い方の輪郭。
ふたつめは、お金をどこに使いたいかの優先順位。
みっつめは、人との関わり方の濃淡。
そして、これらが見えてきてはじめて、葬儀・お墓・相続・断捨離といった、いわゆる終活の各論にも、自分なりの色が乗ってきます。
「家族に迷惑をかけたくないから、家族葬で」ではなく、「自分は静かな時間が好きだから、家族葬で」と言えるようになる。同じ結論でも、入り口がまったく違ってきます。
年代・境遇で変わる、終活の景色
「やりたいことリスト」としての終活は、どの世代にも、その人なりの始め方があります。
20〜30代の方なら、「人生100年あるなら、いまの仕事や暮らしは、本当に望むかたちか」を問い直すきっかけに。事故や病気は年齢を選びませんが、終活はもう一歩手前の、人生設計の見直しから入れます。
40〜50代の方なら、親の見送りやライフステージの変化を経て、「ここからの後半戦、何を増やして何を手放すか」を考える時期に。私自身が「終活はじめの一歩」を始めたのも、まさにこの年代の節目でした。
60〜70代の方なら、定年や時間の使い方の変化を機に、これまで先送りしてきた「やりたいこと」を、いよいよかたちにしていく時期に。「もう遅い」ということは、ありません。むしろ手応えのある一歩を踏み出せる時期だと思います。
そしておひとりさまの方には、私自身の経験から声を大にしてお伝えしたいことがあります。ひとりだからこそ、やりたいことを自由に選べる、という事実です。家族の都合に左右されない分、自分の意思で行き先を決められる豊かさが、間違いなくあります。
よくある不安と、その答え
ここでは、終活を始めようとする方からよくいただく質問に、私の考えをお答えします。
終活はいつから始めるべき?
「いつ」という決まりは、本当はありません。ふと考えた時が、その人の始めどきです。
それでも目安があると安心、という方には、40〜50代の節目(親の体調が気になり始めた時、仕事の区切り、子どもの独立など)をおすすめしています。
終活って、何から始めればいいの?
まずは、先ほどの4つの問いかけを、ご自身に向けてみてください。エンディングノートを開く前に、ご自身の声を聴く時間を取る。それが、「やりたいことリスト」としての終活のスタート地点です。
エンディングノートに法的効力はあるの?
エンディングノートには法的効力はありません。相続や財産分与に関わる希望は、公正証書遺言など正式な遺言書で残す必要があります。
エンディングノートは、数字や手続きでは伝えきれない「自分の気持ちや希望」を書き残すものとして、家族にとってかけがえのない存在になります。
おひとりさまでも、終活って必要なの?
私自身がおひとりさまの当事者として、強く感じています。家族がいる方より、むしろおひとりさまにこそ終活が必要だ、と。意思を残しておかなければ、誰にも引き継がれません。
ただし、それは決して悲しい意味ではありません。「自分の人生は、自分で設計しきっていい」という、おひとりさま特有の自由でもあります。
終活で気をつけたい3つのこと
最後に、終活を進めていくうえで、私が大切にしていることを3つお伝えします。
ひとつめは、不安を増やさないこと。調べれば調べるほど「あれもこれも」と心配になることがあります。そんなときは、いったん手を止める。終活は、心を軽くするための作業です。重くなってきたら、続けるサインではなく、休むサインです。
ふたつめは、家族や周囲が困る希望は、書く前に一度立ち止まること。誰かを縛る希望ではなく、対話のきっかけになる希望を。「絶対こうしてほしい」ではなく、「こうだと嬉しい」くらいの温度で書くと、終活はぐっとあたたかいものになります。
みっつめは、ひとりで抱え込まないこと。相続、税金、不動産、介護、医療。専門家の手を借りるべきテーマは、ためらわず借りる。これが、終活を続けていくいちばんのコツだと、現場での経験を通じて感じています。
まとめ|終活は、「やりたいことリスト」を育てる時間
終活は、人生の終わりに向けて「やることリスト」を埋める時間ではなく、これからの自分に「もっとこう生きたい」を問いかけ、「やりたいことリスト」を少しずつ育てていく時間だと、私は考えています。
そのリストの一行が増えるたびに、いま選ぶ服が、いまかける時間が、いま会いたい人の顔が、少しずつ変わっていく。葬儀・相続・断捨離といったテーマも、その変化の延長にあるものとして、自然と自分の色がついてきます。
このブログ「終活はじめの一歩」では、はじめての方が無理なく踏み出せる「やりたいことリスト」としての終活を、これからも一緒に育てていきます。
あわせて読みたい:終活でやることリスト40項目/終活の準備に必要な5項目/終活はいつから始める?
書き手のことを、もう少し知っていただけたら嬉しいです。
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