終活でエンディングノートは必要?「これからの自分」と対話するための1冊

「終活を始めるなら、まずエンディングノートを書いてください」と、よく言われます。けれど、コンビニで買ったまま開いていないエンディングノートが、テーブルの隅に置きっぱなし。そんな方は、決して少なくありません。

言われる側からすると、ちょっと疑問が湧くと思うんです。書く前に、そもそも「なぜ書くのか」「家族がいない自分にとっても、本当に必要なのか」を、腑に落としたい。

私自身、50代でバツイチ・おひとりさま。終活協議会の活動でたくさんの方とお話してきたなかで、エンディングノートには大きく2つの顔があると感じています。

ひとつは、もしものときに家族や周囲へ意思を伝えるための「申し送り帳」としての顔。
もうひとつは、書き手自身が「これからをどう生きたいか」を確認していく 「自分との対話の道具」 としての顔。

世間ではどうしても前者の顔ばかりが語られがちですが、私は後者の顔がもっと知られていいと思っています。このページでは、その視点も含めて、エンディングノートの役割を一緒に考えていきます。

そもそもエンディングノートとは?

エンディングノートとは、人生の最期に向けて、自分の希望や情報を書きとめておくノートのことです。法的効力はありませんが、家族や信頼できる人に「自分はこうしたい」「これだけは伝えておきたい」を伝える手段として、広く使われるようになりました。

2011年公開の映画『エンディングノート』をきっかけに、世の中に名前が広まり、今では書店、文具店、自治体、保険会社、葬儀社などから、何種類ものノートが出ています。デザインや項目数、装丁もさまざまで、選択肢は年々広がっています。

ただ、世に知られている割に、実際に書き始めている人はそれほど多くありません。内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、老後の備えとして「終活関係の準備」が必要だと考える人のうち、実際に何らかの準備を始めているのは60.2%。裏を返せば、必要性を感じつつも、まだ最初の一歩が踏み出せていない方が約3割いらっしゃるということです。私自身がセミナーで「エンディングノートを書いていますか」と尋ねても、手が挙がるのは1割を超えない場面がほとんどです。

エンディングノートは「2つの顔」を持っている

① 家族や周囲への申し送り帳としての顔

もしものときに、家族や信頼できる人に意思を伝える役目です。葬儀、お墓、医療、相続、連絡先、保険、サブスク、ペット。情報を1冊にまとめておくことで、残された人が短い時間の中で迷わずに動けます。

これは、書き手から残される側への「贈り物」の側面です。

② 自分との対話の道具としての顔

そしてもうひとつ、いま私が現場でいちばん大事にしているのが、こちらの顔です。

エンディングノートを書くという行為は、「自分はこれからをどう生きたいのか」を、自分の言葉でつかみ直す作業でもあります。書きながら、「あ、私はこれを大事に思っていたんだ」「これは、もういいかな」と、いまの優先順位がふっと見えてくる瞬間がある。

だからエンディングノートは、書き終えて家族に渡すための書類というよりも、書きながら自分と対話していくための、長く付き合うノートだと考えています。

エンディングノートで整えておきたい8つのこと

エンディングノートに書く中身は、市販のノートでも構成がさまざまですが、私がおすすめする「いちばん基本の8項目」をご紹介します。

① 自分の人生を振り返るページ

まずは、これまで歩いてきた道を、自分のために少しだけ振り返ってみる時間です。

生まれた場所、印象に残っている時期、大切にしてきた人、続けてよかったこと。書きながら、自分の輪郭がじんわり見えてきます。終活の入口として、私は必ずここから書き始めることをおすすめしています。

② 資産と負債の整理

預貯金、不動産、有価証券、保険、ネット銀行、暗号資産。プラスもマイナスも含めて、いまどこに何があるのかをまとめます。

保管場所、口座番号は控えめに、もしくは別紙にして金庫やノートと別に保管するのが安全です。

③ 葬儀やお別れの希望

家族葬・一日葬・直葬・生前葬。最近は選択肢が大きく広がりました。「絶対こうしてほしくない」「できればこうしたい」のレベルでかまいません。

遺影に使ってほしい1枚を別フォルダや封筒に入れておくと、家族はとても助かります。

④ お墓・供養に関する希望

既存のお墓に入るのか、新しく持つのか、樹木葬や海洋散骨を選ぶのか、永代供養にするのか。継承者の有無もここで一緒に書いておきます。

⑤ 医療と介護の希望

かかりつけ医、延命治療や告知の希望、もしものときに行ってほしい病院。介護をどこで・誰に・どのように受けたいかも、ここに記しておきましょう。

家族にとってもっとも判断に迷うのが、この医療の意思決定です。書き残しておくだけで、家族の心の負担が大きく変わります。

⑥ 相続・遺言への気持ち

「誰に・何を・どう残したいか」の気持ちを、ここに置きます。

ただし、エンディングノートには法的効力がありません。確実に残したい財産分与は、別途、公正証書遺言で残すのが安心です。エンディングノートには「気持ち」を、遺言書には「法的な意思」を、と書き分けるのがコツです。

⑦ 連絡先リスト

訃報を知らせてほしい友人、職場、お世話になった方々の連絡先を、整理しておきます。LINEだけで繋がっている人など、家族では把握できない関係を整理しておくことが大切です。

⑧ 大切な人へのメッセージ

そして、最後にいちばん書きたいページがここです。

家族、友人、お世話になった方へ。手紙のように書いてもいいし、ひと言だけでも構いません。エンディングノートを開いた家族にとって、もっとも心に残るのは、たいていこのページです。

「やりたいことリスト」も、ぜひ書いてみてほしい

一般的なエンディングノートには載っていないけれど、私が現場で必ずおすすめしているのが、「やりたいことリスト」のページを自分で足すことです。

「もし人生があと1年だったら、何をしたい?」
「ずっと気になっていたけれど、まだ手をつけていないことは?」
「今までやってきて、本当によかったことは?」

こうした問いに答えていくページを、エンディングノートの先頭に1枚足してみる。それだけで、ノート全体の手触りが、「もしものとき用の事務処理ノート」から、「これからをどう生きたいかを考えるノート」へと変わります。

私自身、いまの「やりたいことリスト」の上位には、貯まったマイルを使ってマイラーとして世界を回ること、新しくサーフィンに挑戦すること、同じおひとりさまの仲間に経験を伝えていくことが並んでいます。

エンディングノートを始めるための3ステップ

① 自分に合う一冊を選ぶ

書店、文具店、自治体の無料配布、保険会社の無料ノート、ダウンロード版、アプリ。たくさんの選択肢があります。

「全部のページを埋めたくなる」立派なものより、「気軽に書ける」軽さのあるものから始めるのがおすすめです。書きやすさで選ぶ。それが続けるコツです。

② 気になるページから書き始める

最初のページから順に書く必要は、まったくありません。目次を眺めて、気になるページから1ページずつ。書きたくないページは飛ばして大丈夫。

気持ちが変わったら、何度でも書き直していい。エンディングノートは、書き上げる書類ではなく、人生の節目ごとに育てていく「育てるノート」です。

③ 迷ったらプロに相談する

相続や税金、不動産、介護、医療など、ご自身だけでは判断が難しいテーマが必ず出てきます。

司法書士・行政書士・弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナー、自治体の終活窓口、終活カウンセラー・終活ガイドなど、頼れる窓口は意外と多くあります。「ひとりで抱え込まない」こと自体が、終活を続けていくいちばんの味方になります。

まとめ|エンディングノートは、「これから」を整える1冊

エンディングノートは、「もしものときのための申し送り帳」であると同時に、書き手自身が「これからをどう生きたいか」を確認していく 「自分との対話の道具」 です。

完璧に書き上げる必要はありません。気になるページから、自分のペースで、何度でも書き直していい。書き終えるためのノートではなく、書きながら育てていくノート。それが、エンディングノートとの長い付き合い方です。

このブログ「終活はじめの一歩」では、はじめての方が無理なく踏み出せる「やりたいことリスト」としての終活を、これからもやさしく綴っていきます。

あわせて読みたい:エンディングノートとは?終活ノートの基礎知識エンディングノートの書き方

書き手のことを、もう少し知っていただけたら嬉しいです。
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