おひとりさまの終活|50代当事者が考える、自由なこれからのデザイン

夜、スマホで「おひとりさま 老後」「身元保証」と検索しては、答えが見つからないまま画面を閉じる。派手に困っているわけではないけれど、心のどこかに、しまい忘れた小さな引き出しがある。このページを開いてくださったあなたは、もしかしたら、私と近い場所に立っている方かもしれません。

私自身、50代でバツイチ・おひとりさま、子どもはいません。終活の情報を探しても、「ご家族と一緒に」「お子さまに残す」という前提のものが多くて、自分の輪郭にはどうもしっくりこない。同じような立場の方とたくさん話してきたなかで、ひとつ確信していることがあります。

おひとりさまの終活は、不安を消すためにやるものではなく、「ひとりだからこそ自由に選べる、これからの暮らし」をデザインしていく時間だということ。

このブログ「終活はじめの一歩」では、私自身の経験を踏まえて、おひとりさまの終活を一緒に考えていきます。

少しデータの話をすると、内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、65歳以上の人口に占める一人暮らしの割合は、令和2年時点で男性15.0%・女性22.1%。令和32年には男性26.1%・女性29.3%まで増える見込みとされています。おひとりさまの未来は、決して特別な少数派の話ではなく、これからの暮らしを考えるうえで、もはや前提として共有されるテーマになりつつあります。

おひとりさまの終活、私が大切にしている考え方

「迷惑をかけないため」だけにしない

世間で語られるおひとりさまの終活は、「身寄りがないと周囲に迷惑がかかるから、ちゃんと準備しておきましょう」という論調になりがちです。もちろん大切な視点なのですが、それだけが理由だと、終活そのものが気の重いタスクに見えてしまいます。

私自身、自分の終活を考えはじめたときに気づいたのは、「迷惑をかけない」より先に、「自分はこれからどう生きたいのか」を考えたほうが、ずっと自然に手が動くということでした。

ひとりだからこそ、選択肢が広い

家族や子どもと暮らす方は、ライフプランに家族の都合が大きく関わってきます。それに対しておひとりさまは、行く場所、使う時間、お金の使い道を、自分の意思だけで決められます。

「ひとりは寂しい」という見方もある一方で、「ひとりは自由」という側面は、もっと語られてもいいと、私は感じています。マイラーとして世界を回りたいと思えばすぐ動けるし、サーフィンのような新しいスポーツに挑戦するのも、誰にも気兼ねがいりません。

おひとりさまが終活で整えておくこと8つ

「自由を活かす」ためにも、いざという時の備えは欠かせません。ここからは、おひとりさまの終活で押さえておきたい8つのことを、具体的に見ていきます。

全部を一気にやる必要はありません。気になるところから、自分のペースでひとつずつ進めましょう。

① 身の回りの物を整理する

物の量は、ご自身の暮らしの軽やかさにそのままつながります。

おひとりさまの場合、亡くなったあとに整理してくれる家族がいないことも多いので、生前に少しずつ整えておくと、自分の日々が過ごしやすくなりますし、もしものときの第三者の負担も軽くなります。「今日は引き出しひとつ」「今日は1冊」くらいから。一気にやろうとせず、長い目で。

② 財産の整理

預貯金、有価証券、不動産、各種カードや保険証券、ネット銀行の口座。まずはどこに何があるかを、自分で把握するところから始めます。

おひとりさまの場合、本人しか知らない口座やサブスクが残ると、誰にも気づかれず手続きが進まないリスクがあります。一覧表にまとめて、信頼できる人にも保管場所を伝えておきましょう。

③ 遺言書を作成する

おひとりさまの場合、法定相続人がいないと、財産は最終的に国に帰属することになります。「お世話になった人へ」「特定の団体へ」など、自分の意思を反映させたい方は、公正証書遺言として残すのがおすすめです。

費用は数万円から十数万円ですが、確実に意思が残ります。司法書士・行政書士・弁護士など、専門家への相談を最初から想定に入れましょう。

④ 任意後見制度の手続き

判断能力が落ちてきたときに、財産管理や生活上の手続きを誰に任せるか。これを、判断能力があるうちに自分で決めておく仕組みが任意後見制度です。

信頼できる親族・友人・専門家と任意後見契約を結んでおくと、いざという時に、家庭裁判所が選ぶ法定後見人ではなく、自分が選んだ人にサポートしてもらえます。おひとりさまにとって、心強い制度です。

⑤ 死後事務委任契約の手続き

亡くなったあとの手続き、葬儀、納骨、行政手続き、家財整理、サブスク解約などを、誰かに委任しておく契約です。

家族がいないおひとりさまの場合、こうした事務を引き受けてくれる人を生前に契約しておくことが大切。司法書士や弁護士、NPOや専門業者が窓口になっています。

⑥ 人や地域とのつながりを少しずつ育てる

「ひとりだから誰とも関わらない」というのは、終活の観点ではあまりおすすめできません。何かあったときに気づいてくれる人、声をかけてくれる人を、ふだんから少しずつ持っておくと、暮らしの安心感がぐっと変わります。

地域の集まり、趣味のサークル、自治体の見守りサービス、近所のなじみのお店。負担にならない範囲で、無理せず広げていきましょう。

⑦ 葬儀やお墓を生前に整える

葬儀やお墓を、生前に契約しておく方法があります。家族葬、一日葬、直葬、樹木葬、海洋散骨、永代供養。選択肢はぐっと増えました。

「自分らしいお別れ」を考える時間は、これからの暮らしを軽くする時間でもあります。費用も含めて、納得のいく形を見つけておきましょう。

⑧ エンディングノートを書く

ここまでの①〜⑦を、すべて受け止めてくれるのがエンディングノートです。

法的効力はありませんが、自分の気持ち・希望・つながりの記録を、ひとまとめにしておける場所。一度に書き上げる必要はありません。気になるページから、何度でも書き直せる「育てるノート」として、長く付き合いましょう。

おひとりさまだからこそ、書いておきたい「やりたいことリスト」

整える項目は8つご紹介しましたが、私がいちばんおすすめしたいのは、その前に、もうひとつのリストを書いておくことです。それが、「やりたいことリスト」です。

「もし人生があと1年だったら、何をしたい?」
「ずっと気になっていたけれど、まだ手をつけていないことは?」
「今までやってきて、本当によかったことは?」

こうした問いを、ご自身に向けてみてください。私自身は、コロナで止まっていた海外への旅を、貯まったマイルやポイントを使ってマイラーとして再開すること。新しくサーフィンに挑戦すること。そして同じおひとりさまの仲間に、自分の経験を伝えていくこと。この3つが、いまの私の「やりたいことリスト」の中心に並んでいます。

やりたいことが見えてくると、不思議と「そのために整えておきたいこと」の輪郭も、はっきりしてきます。8つの項目は、その輪郭を支えるための土台になるものだと考えてみてください。

ひとりで抱え込まないための、3つの始め方

おひとりさまの終活は、ひとりで進めようとすると重く感じやすいテーマです。最初から人の手を借りる前提で進めるのが、続けるコツです。

① おひとりさま向けのセミナーに参加する

「ひとり暮らしの終活」「おひとりさまの相続」などをテーマにした終活セミナーが、各地で開かれています。

同じ立場の方の声が聞けたり、専門家の話をまとめて聞けたりするので、最初の一歩としてとてもおすすめです。自治体や公民館、民間企業が無料で開催している会も多くあります。

② 無料の終活相談を活用する

自治体の終活窓口、社会福祉協議会、終活カウンセラー・終活ガイドの無料相談、葬儀社や司法書士事務所の初回相談など、お金をかけずに話を聞ける窓口は意外に多くあります。

「相談していいのかな」とためらわず、気になる窓口にひと言、声をかけてみてください。

③ オンラインで、自分のペースで学ぶ

最近は、終活に関する書籍やオンライン講座も充実してきました。人と直接会うのが苦手、地方在住で参加できる会が少ないという方には、自分のペースで学べるオンラインもおすすめです。

私自身も書籍を書いています。『終活スペシャリストになろう』(幻冬舎、2021年)。終活を自分のこととしてだけでなく、誰かを支える仕事にしたい方にも向けた一冊ですが、おひとりさまとして「これから」を整えていく上でも、役立つ視点を散りばめています。

まとめ|おひとりさまの終活は、自由な「これから」をデザインする時間

おひとりさまの終活は、「ひとりだから仕方なくする活動」ではなく、ひとりだからこそ手にできる自由なこれからを、自分の手でデザインしていく時間です。

医療や介護、財産の行き先、自分らしいお別れの形。整えるべきテーマは確かにあります。ただし、その前にぜひ書いてみてほしいのが、「やりたいことリスト」のほうです。

やりたいことが見えれば、整えるべきことも自然と輪郭を持ちます。順番を、ひっくり返してみる。それが、私が現場で何度もお伝えしている、おひとりさま終活のいちばんのコツです。

あわせて読みたい:50代独身の終活独身の終活でやること10終活とは?

書き手のことを、もう少し知っていただけたら嬉しいです。
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