はじめに:終活の「次の一歩」へ。具体的な計画を立てるための実践的ガイド
「終活」という言葉は知っているし、その必要性も感じている。もしかしたら、エンディングノートを手に取ってみたり、身の回りの整理を少し始めてみたりしたかもしれません。しかし、遺言書の法的なこと、複雑な資産の整理、もしもの時の契約など、専門的な知識が必要な場面で足が止まっていませんか?「家族に迷惑はかけたくないけれど、具体的に何をどう進めればいいのか…」そんな実践的な悩みを抱えるあなたのために、この記事は存在します。本記事では、単なる項目の羅列で終わらない、一歩踏み込んだ「終活やることリスト」を提示します。あなたの状況に合わせた具体的な進め方や、信頼できる専門家の見つけ方までを網羅し、漠然とした不安を解消し、確かな行動へと繋げるための実践的ガイドです。
【決定版】終活でやるべきことリスト10項目|チェックシート付き
終活は多岐にわたりますが、まずは全体像を把握することが大切です。ここでは、誰もが押さえておくべき基本的な10項目をリストアップしました。これらを一つひとつ確認し、ご自身の状況と照らし合わせながら進めていくことで、計画的に終活を進めることができます。各項目の詳細は後述しますが、まずはこのリストをチェックシートとしてご活用ください。ご自身の「今」やるべきこと、そして「これから」考えるべきことの優先順位が見えてくるはずです。さあ、あなたの終活の第一歩をここから始めましょう。
1. エンディングノートの作成:意思を伝える第一歩
エンディングノートは、終活のスタート地点として最も取り組みやすい項目の一つです。これは、ご自身の情報や希望、そして家族へのメッセージを自由に書き記すためのノートです。遺言書とは異なり法的な効力はありませんが、万が一の際に家族が様々な手続きを進める上で非常に役立ちます。例えば、銀行口座の情報、加入している保険、スマートフォンのパスワード、親しい友人の連絡先など、あなたにしか分からない情報をまとめておくことで、残された家族の負担を大きく軽減できます。また、延命治療や介護に関する希望、葬儀の形式といったデリケートな問題について、ご自身の意思を穏やかに伝えるための大切なツールにもなります。まずは市販のノートや自治体が配布しているものを参考に、書けるところから気軽に始めてみましょう。
エンディングノートに書くべき内容
エンディングノートに記載すべき内容に決まりはありませんが、一般的に以下の項目を網羅しておくと、いざという時に役立ちます。まずは「自分自身に関する基本情報(本籍地、マイナンバーなど)」、「資産に関する情報(預貯金、不動産、有価証券、ローンなど)」、「医療・介護の希望」、「葬儀・お墓の希望」、「大切な人へのメッセージ」などが挙げられます。加えて、ペットを飼っている場合はその世話について、またデジタル遺品(SNSアカウント、オンラインサービスのID/パスワード)に関する情報も忘れずに記載しましょう。
法的効力はないが、家族への大切なメッセージに
重要な点として、エンディングノートには遺言書のような法的効力はありません。例えば「長男に全財産を相続させる」と書いても、法的な相続手続きにおいては無効です。財産の分配など法的な拘束力を持たせたい事柄は、必ず別途、正式な遺言書を作成する必要があります。しかし、エンディングノートの価値はそこに留まりません。これは、法律では伝えきれないあなたの想いや感謝の気持ちを家族に届けるための、最後のラブレターとなり得ます。家族があなたの意思を尊重し、円満に手続きを進めるための、何よりの道しるべとなるでしょう。
2. 資産の棚卸しと整理:相続の基本
相続トラブルの多くは、資産の全体像が不明確なことから生じます。終活における資産整理の第一歩は、ご自身が所有する全財産を正確に把握し、一覧化すること、つまり「財産目録」の作成です。預貯金や不動産、株式といったプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借入金などのマイナスの財産もすべて洗い出します。この作業を通じて、現在の経済状況を客観的に見つめ直すことができ、今後の生活設計や相続対策を具体的に検討する上での基礎資料となります。また、不要な銀行口座やクレジットカードを解約するなど、生前のうちに資産をシンプルにしておくことも、残された家族の手間を省く上で非常に重要です。この地道な作業が、円満な相続への最も確実な道筋を作るのです。
財産目録の作成方法
財産目録の作成に決まった形式はありませんが、誰が見ても分かるように整理することが重要です。ノートやExcelなどを使い、「プラスの財産」と「マイナスの財産」に分けてリストアップしましょう。プラスの財産には「預貯金(銀行名・支店名・口座番号)」「不動産(所在地・面積)」「有価証券(証券会社名・銘柄)」「生命保険(保険会社名・証券番号)」などを記載します。一方、マイナスの財産には「借入金(借入先・残高)」「住宅ローン」「未払金」などを明記します。通帳や権利証、保険証券などの関連書類の保管場所も併記しておくと、より親切です。
負債(ローン・借金)の確認も忘れずに
資産の棚卸しで見落としがちなのが、負債の存在です。相続はプラスの財産だけでなく、ローンや借金といったマイナスの財産も引き継がれます。もし負債の方が多い場合は、相続人が「相続放棄」という手続きを選択することも可能です。しかし、相続放棄は相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。財産目録に負債の情報が正確に記載されていれば、相続人は迅速かつ適切な判断を下すことができます。家族に予期せぬ負担をかけないためにも、負債の確認は必ず行いましょう。
3. 遺言書の作成:法的に有効な意思の実現
エンディングノートが「想い」を伝えるものであるならば、遺言書はあなたの「意思」を法的に実現させるための、極めて重要な公式文書です。特に、法定相続分とは異なる割合で財産を分けたい場合や、特定の相続人に特定の財産(例えば自宅不動産)を相続させたい場合、あるいは法定相続人以外の人(お世話になった人など)に財産を遺したい(遺贈)場合には、遺言書の作成が不可欠となります。遺言書がない場合、遺産は民法の定める法定相続人・法定相続分に従って分割協議が行われますが、これがしばしば「争続」の火種となります。元気で判断能力が明確なうちに、ご自身の意思を法的に有効な形で残しておくことは、残される家族への最大の思いやりと言えるでしょう。専門的な知識が求められるため、作成にあたっては専門家への相談も視野に入れることが賢明です。
遺言書の種類と法的効力の違い(自筆証書・公正証書)
遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。 自筆証書遺言は、全文、日付、氏名を自書し、押印することで作成できる手軽な方法です。費用もかかりませんが、形式に不備があると無効になるリスクや、紛失・改ざんの恐れがあります。法務局で保管してもらう制度もありますが、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。 公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう方式です。証人2名の立会いが必要で費用もかかりますが、形式不備で無効になる心配がなく、原本が公証役場に保管されるため安全性も極めて高いです。検認手続きも不要で、最も確実な方法と言えます。
遺言書作成時の注意点と専門家への相談
遺言書を作成する際は、「遺留分」に注意が必要です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障されている遺産の取り分のことです。これを侵害する内容の遺言も有効ですが、後に相続人から「遺留分侵害額請求」をされる可能性があり、トラブルの原因となります。このような法的な問題を避け、ご自身の意思を確実に実現するためにも、遺言書の作成、特に内容が複雑になる場合は、弁護士や司法書士、行政書士といった法律の専門家に相談することを強くお勧めします。
4. 生前整理(断捨離):モノと心の整理
生前整理は、単なる「片付け」ではありません。ご自身の持ち物と向き合い、これからの人生に必要なもの、そうでないものを見極める作業を通じて、物理的な空間だけでなく、心の整理も進めることができます。物が少なくなることで日々の暮らしが快適になるのはもちろん、将来、遺品整理をすることになる家族の負担を大幅に軽減できます。思い出の品々を整理しながら、ご自身の人生を振り返る貴重な時間にもなるでしょう。体力と判断力があるうちに少しずつ始めるのがポイントです。「1日15分だけ」「この引き出しだけ」といった小さな目標を立て、無理のないペースで進めていきましょう。
5. デジタル終活:デジタル資産の管理と処分
現代において、スマートフォンやパソコンの中にある「デジタル資産」の整理は避けて通れません。これには、ネット銀行の口座、SNSアカウント、有料のサブスクリプションサービス、オンラインストレージ上の写真データなどが含まれます。これらのIDやパスワードが分からなければ、家族は口座を解約できず、不要なサービス料金が引き落とされ続ける可能性があります。また、他人に見られたくないデータが残ってしまうことも。重要なアカウント情報やパスワードの一覧を作成し、信頼できる家族にだけ保管場所を伝えておく、不要なアカウントは解約しておくといった対策が必要です。
6. 医療・介護の意思表示:リビングウィルの準備
もしもの時、ご自身が意思表示できなくなった場合に備え、延命治療や終末期医療(ターミナルケア)に関する希望を明確にしておくことは非常に重要です。これを「リビングウィル(尊厳死の宣言書)」と呼びます。どの程度の医療を望むのか、あるいは望まないのかを文書で示しておくことで、家族が決断に悩む精神的負担を和らげることができます。エンディングノートに記載するほか、より意思を明確にするために「事前指示書」として独立した書面で作成する方法もあります。かかりつけ医や家族と日頃から話し合っておくことも大切です。
7. 葬儀・お墓の準備:希望の伝え方
ご自身の最期のセレモニーである葬儀や、眠る場所となるお墓について、希望をまとめておくことも終活の重要な一部です。どのような形式の葬儀(一般葬、家族葬、直葬など)を望むか、誰に参列してほしいか、遺影に使ってほしい写真はあるか、などを具体的に記しておきましょう。また、お墓についても、伝統的なお墓を継承するのか、あるいは樹木葬や散骨、納骨堂といった新しい形を望むのか、ご自身の考えを明確にしておくことで、残された家族が迷うことなく準備を進められます。生前に葬儀社と相談したり、お墓を見学したりするのも良いでしょう。
8. 人間関係の整理と連絡先リスト作成
万が一の際に、誰に連絡をしてほしいかをまとめたリストを作成しておきましょう。親族だけでなく、特に親しかった友人や、お世話になった方々の連絡先を一覧にしておくことで、訃報の連絡がスムーズに行えます。エンディングノートに記載するのが一般的です。この作業は、ご自身の人生における大切な人々との繋がりを再確認する良い機会にもなります。これを機に、しばらく連絡を取っていなかった友人に連絡してみるのも、人生を豊かにする一つの終活と言えるでしょう。
9. ペットの将来:信頼できる預け先の確保
ペットを飼っている方にとって、ご自身の身に何かあった後のペットの世話は、非常に切実な問題です。信頼できる家族や友人に、万が一の際にペットの世話をお願いできるか、事前に相談し、承諾を得ておくことが不可欠です。引き受け手がいない場合は、NPO法人や専門の施設に託すといった選択肢も検討する必要があります。ペットの種類や年齢、健康状態、性格などを詳しく記した飼育マニュアルを作成し、飼育費用についても準備しておくなど、具体的な対策を講じておきましょう。
10. 各種契約の見直し:保険・サブスクリプションなど
現在のライフステージに合わなくなった生命保険や医療保険がないか、定期的に見直しを行いましょう。保障内容が過剰であったり、逆に不足していたりする場合があります。また、利用頻度の低いクレジットカードや、もう見ていない動画配信サービスなどのサブスクリプション契約は、この機会に解約を検討しましょう。月々の小さな支出も、積み重なれば大きな金額になります。こうした細かな契約を整理しておくことで、家計がスリムになるだけでなく、死後の手続きの煩雑さを減らすことにも繋がります。
【状況別】終活やることリストのポイント|おひとりさま・子なし夫婦の場合
終活の基本的な項目は共通していますが、家族構成やライフスタイルによって、特に重点を置くべきポイントは異なります。ここでは、特に準備が重要となる「おひとりさま(独身・身寄りなし)」と「子なし夫婦(DINKs)」のケースに焦点を当て、それぞれが見落としがちな注意点や、特有の課題に対する具体的な対策を解説します。ご自身の状況に当てはまる方は、ぜひ参考にしてください。一般的なリストに加えて、これらの点を押さえることで、より安心できる終活計画を立てることができます。
おひとりさま(独身・身寄りなし)が特に準備すべきこと
おひとりさまの終活で最も重要なのは、「ご自身の意思決定ができなくなった時」と「亡くなった後」の手続きを、誰に、どのように託すかを決めておくことです。頼れる親族がいない場合、医療や介護の契約、財産管理、そして死後の葬儀や納骨、各種手続きなどを自分一人で手配しておく必要があります。具体的には、元気なうちに信頼できる人や専門家と「任意後見契約」を結び、判断能力が低下した際の財産管理や身上監護を任せられるようにしておくことが有効です。さらに、亡くなった後の手続き全般を委任する「死後事務委任契約」も併せて検討すべきでしょう。これらの契約は、法的な裏付けをもってあなたのもしもに備える、おひとりさまにとっての強力なセーフティネットとなります。
子なし夫婦(DINKs)が見落としがちな相続の注意点
お子さんがいないご夫婦の場合、「配偶者が亡くなったら、全財産は残された自分が相続する」と思い込んでいるケースが少なくありませんが、これは大きな誤解です。民法上、亡くなった方に親(または祖父母)が健在であれば、その親も相続人となり、配偶者と遺産を分けることになります(配偶者2/3、親1/3)。もし親がすでに亡くなっている場合は、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります(配偶者3/4、兄弟姉妹1/4)。長年連れ添った配偶者に全財産を残したいと考えるのであれば、「配偶者に全財産を相続させる」旨を明記した遺言書を必ず作成しておく必要があります。この一手間を怠ると、思わぬ相続トラブルに発展し、残された配偶者を苦しめることになりかねません。
一歩進んだ終活:もしもに備える3つの契約
終活の基本を押さえた上で、さらに将来の不安を解消し、ご自身の意思を確実に実現するためには、法的な裏付けのある「契約」を活用することが非常に有効です。特に、判断能力の低下や死後の手続きといった、自分自身では対応できなくなる事態に備えるための契約は、安心して老後を過ごすための重要な鍵となります。
ここでは、終活を考える上で知っておきたい代表的な3つの契約、「任意後見契約」「死後事務委任契約」「家族信託」について、それぞれの役割と目的を分かりやすく解説します。これらの制度を理解し、必要に応じて活用することで、より盤石な終活計画を築くことができます。
任意後見契約:判断能力が低下した時に備える
任意後見契約とは、ご自身が元気で判断能力があるうちに、将来、認知症などで判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめご自身で選んだ代理人(任意後見人)に、財産の管理や医療・介護の手続きなどを任せる契約です。家庭裁判所が選任する「法定後見」とは異なり、誰に何を任せるかを自分で決められるのが最大の特長です。信頼できる家族や友人、あるいは弁護士や司法書士などの専門家を後見人に指定し、公正証書で契約を結びます。これにより、判断能力が低下した後も、ご自身の望む生活が守られる可能性が高まります。おひとりさまや、頼れる親族が遠方にいる方などにとっては、特に重要な備えと言えるでしょう。
死後事務委任契約:死後の手続きを託す
死後事務委任契約は、ご自身が亡くなった後に行われる様々な手続き(役所への届出、葬儀・納骨、遺品整理、公共サービスの解約など)を、生前に第三者へ依頼しておく契約です。相続人には、法律上、これらの事務を行う義務はありません。そのため、身寄りのない方や、親族に負担をかけたくない方が、信頼できる友人や専門家(NPO法人、弁護士、行政書士など)とこの契約を結ぶケースが増えています。遺言書では死後の事務手続きについて指定することはできないため、確実に実行してほしい場合は、この契約が有効な手段となります。ご自身の望む形で最期を締めくくるための、大切な準備の一つです。
家族信託:柔軟な資産管理と承継を実現する
家族信託は、ご自身の財産を、信頼できる家族に託し、ご自身が定めた目的(例えば、自分の生活・介護資金、配偶者の生活保障など)に従って管理・承継してもらう仕組みです。遺言や成年後見制度では対応しきれない、より柔軟な資産管理が可能になります。例えば、ご自身が認知症になった後も、子どもが信託された不動産を売却して介護費用に充てたり、二次相続(配偶者が亡くなった後の相続)の際の財産の承継先まで指定したりすることができます。特に、障がいを持つ子の将来のためや、事業承継を円滑に進めたい場合などに活用されることが多い、オーダーメイドの財産管理・承継の形です。
終活をスムーズに進めるための3つの心構え
終活は、時に精神的な負担を伴う作業です。しかし、いくつかの心構えを持つことで、前向きに、そしてスムーズに進めることができます。
1. 完璧を目指さず、できることから始める
終活の項目は多岐にわたるため、すべてを一度にやろうとすると圧倒されてしまいます。「今日はエンディングノートを1ページだけ書く」「今週末はクローゼットの服を見直す」など、小さなステップに分解し、できることから着手しましょう。大切なのは、始めることです。
2. 一人で抱え込まず、家族と共有する
終活は、あなた一人の問題ではありません。あなたの想いや準備の状況を家族と共有することで、家族はあなたの意思を理解し、いざという時に協力しやすくなります。また、話し合う中で、家族の希望を知ることもできます。終活は、家族の絆を深める良い機会にもなり得ます。
「終活は、残される人のためだけにするものではありません。これからの人生を、より自分らしく、安心して生きるために行うものです。定期的に内容を見直し、その時々の自分の気持ちに正直にアップデートしていくことが大切です。」終活カウンセラー
3. 定期的に見直し、更新する
一度作成したエンディングノートや遺言書も、時間と共に考えや状況は変わるものです。資産状況の変化、家族構成の変化、心境の変化などに合わせて、年に一度は見直し、必要であれば内容を更新しましょう。終活は「一度やったら終わり」ではなく、人生と共に歩む継続的なプロセスなのです。
専門的な終活は誰に相談すべき?相談先と役割の違い
終活を進める中で、遺言書の作成や相続税対策、法的な契約など、ご自身だけでは判断が難しい専門的な課題に直面することがあります。このような場合、無理に一人で解決しようとせず、専門家の力を借りることが賢明です。しかし、「弁護士」「司法書士」「行政書士」「税理士」など、様々な専門家がいて、誰に何を相談すれば良いのか分かりにくいかもしれません。それぞれの専門家には得意分野と役割があります。ご自身の相談したい内容に合わせて、最適な専門家を選ぶことが、問題をスムーズに解決するための第一歩となります。
弁護士・司法書士・行政書士・税理士の選び方
終活における専門家の選び分けは、相談内容によって決まります。
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弁護士:相続トラブルがすでに発生している、またはその可能性が高い場合に最適です。代理人として交渉や調停、訴訟を行うことができます。遺言書作成の相談も可能です。
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司法書士:不動産の名義変更(相続登記)の専門家です。また、遺言書作成のサポートや、任意後見、家族信託に関する手続きも得意としています。
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行政書士:遺言書の作成支援や、遺産分割協議書の作成など、書類作成のプロフェッショナルです。比較的費用を抑えて相談できることが多いです。
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税理士:相続税に関する相談の専門家です。相続税の申告が必要な場合や、生前の相続税対策(節税)を考えたい場合に頼りになります。
まずは無料相談などを活用し、ご自身の課題に最も適した専門家を見つけることが重要です。信頼できる人柄かどうかも、大切な選択基準となります。
相談先別・得意分野の比較表
各専門家の役割を一覧表にまとめました。相談先を選ぶ際の参考にしてください。
専門家 |
主な得意分野 |
こんな時に相談 |
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弁護士 |
相続トラブルの解決(交渉・調停・訴訟)、遺言書作成 |
・相続人間で揉めている、揉めそうだ |
司法書士 |
不動産の相続登記、遺言書作成支援、成年後見、家族信託 |
・不動産の名義変更が必要 |
行政書士 |
遺言書作成支援、遺産分割協議書の作成、死後事務委任契約 |
・トラブルはないが、法的な書類作成を手伝ってほしい |
税理士 |
相続税の申告、生前の相続税対策(節税) |
・相続税がかかるか知りたい |
終活 やることリストに関するよくあるご質問(FAQ)
終活は何歳から、何から始めるのが良いですか?
終活を始めるのに決まった年齢はありません。思い立った時が最適なタイミングです。一般的には、定年退職や子どもの独立など、人生の節目を機に始める方が多いですが、体力と判断力がある50代、60代から始めるのが理想的です。最初の一歩としては、ご自身の想いや情報を整理できる「エンディングノートの作成」から始めるのが最も取り組みやすいでしょう。
終活にかかる費用はどのくらいですか?
費用は、どこまで行うかによって大きく異なります。エンディングノートの作成や身辺整理など、自分でできる範囲であればほとんど費用はかかりません。一方で、専門家に依頼する場合は費用が発生します。例えば、公正証書遺言の作成は数万円から、相続税対策や家族信託などは内容に応じて数十万円以上かかることもあります。まずは無料相談などを活用して見積もりを取ることをお勧めします。
家族に終活の話を切り出す良い方法はありますか?
直接的に「終活を始めた」と切り出すのが難しい場合は、「最近、友人が親の相続で大変だったみたいで…」「テレビで終活の特集を見て、うちも考えておいた方が良いかなと思って」など、第三者の話やメディアの情報をきっかけにするのが自然です。また、「迷惑をかけたくないから、自分の希望をまとめておきたい」というように、家族を思いやる気持ちを伝えることで、相手も受け入れやすくなります。
遺言書は自分で作成しても法的に有効ですか?
はい、法律で定められた形式(全文・日付・氏名の自書、押印など)を守って作成された「自筆証書遺言」は法的に有効です。ただし、一つでも形式に不備があると無効になってしまうリスクがあります。確実性を求めるのであれば、費用はかかりますが、公証役場で作成する「公正証書遺言」の方が安心です。
まとめ:終活は残りの人生を豊かにするための準備
終活は、決して「死への準備」というネガティブなものではありません。むしろ、これまでの人生を振り返り、これからの時間をどう生きるかを見つめ直す、ポジティブな活動です。やるべきことを一つひとつ整理し、将来への不安を解消していくプロセスは、心に平穏をもたらし、今をより安心して、自分らしく生きるための力となります。今回ご紹介した「やることリスト」は、そのための具体的な道しるべです。すべてを一度にやろうと気負う必要はありません。まずは、あなたにとって最も気になる項目、最も始めやすい項目から、その一歩を踏み出してみてください。その小さな一歩が、あなたの未来と、あなたの大切な人の未来を、より豊かに、そして穏やかなものにしてくれるはずです。